工場にはたくさんのお母さんたちがいる。 僕は彼女たちの仕事に力強さを見つけた。
あるお母さんの話。 工場の作業でお菓子の箱を洗浄することになった。 初めてのことだったので丁寧に一つ一つやっていた。 大きな洗浄機にお菓子の箱を入れていると、 「それはこうした方がラクよ。」 「洗い終わった箱を取り出すのはこうするの!」と 元気よくやり方を教えてくれる。
その彼女の手さばきといったら、早いのなんの。 僕が1つの箱を洗い終わるまでに3つくらいは洗ってしまう。
おそらく仕事が遅い僕に見かねて教えてくれたんだろう。
「ご丁寧にありがとうございます」と伝えると 「いいのよ。こうした方がやりやすいでしょ」と
笑顔で答える。
僕の背中に自分の子供の姿を重ねたのだろうか。
彼女にはおそらく家庭があって 家に帰ったら料理の支度や家の片付けなど やることはたくさんあるだろう。
自分の母から彼女の家庭の振る舞いを想像する。 僕も自分の母の姿を彼女に重ねていた。
工場での仕事は簡単で単純な作業の連続だけど 8時間立って仕事をするのは辛い。 25歳の僕が辛いのだから、それより上の お母さん世代の人たちの身体を疲れが 纏わりついていることは想像に難くない。
そんな誰かの母たちが 工場でも、家庭でも気丈に振舞って 僕の目の前の日常をつくっている。
そう考えると、「お母さんタフだなあ」と思うのである。
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