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執筆者の写真t.yagihashi

言葉と顔

タイトルに惹かれてtwitterで見かけた本を読んだ。

題名を読むと一瞬2ちゃんねるのスレッド名のようにも思えたが 彼女がどのように”元アイドル”へと変容していったのかが気になった。

彼女が綴る言葉の節々には「アイドル」だった自分への眼差しがあった。

「アラサー」「元アイドル」「結婚」という言葉たち。

こいつらは文中に何度も何度も出てくる。


おそらく幼い頃父親が他界し、その後稼ぎのためにアイドルになった

彼女がその生活の過程で作られた自分の理想像や人生観にとって

根深いキーワードなのだろう。


アイドルをやめて、ライターとして生きている大木亜希子さんに

執拗にまとわりついてくる強迫観念のような言葉たち。

僕にはそう映った。


特にパニック障害を乗り越える手段として、

美容やダイエットが一つのきっかけになったというのは

彼女の人生が未だにアイドルと地続きなんだろうなと想像している。

だから彼女の言葉からは力強さも感じるが

同時に未練のようなものも見ることができる。



クリスマスに一人過ごすことに恥ずかしさを覚えたらしい彼女が 

街中で見かけた少女に対するセリフが特が僕は好きだ。


「クリスマスケーキを大切そうに抱えながら歩く、十九歳くらいの少女。

 処女かな。(206p)」


大木さんの街を歩く少女への目線は色々な立場が交錯している。

 輝かしいアイドルだった自分

 アラサーである自分

 一人身の自分


そして幼く見える女の子に対して

少しマウントをとるかのようなセリフを胸中でつぶやく。


シンプルだけど、色鮮やかな言葉だ。



彼女が語る言葉は、今の彼女の立場や葛藤が顔を覗かせて

僕の想像を掻き立ててくれた。

大木さんのことは初めて知ったけど、

彼女の在りようが伝わってくるようだった。


作者が顔を覗かせる文章って、いいよね。



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